落語、鰻のたいこのあらすじと内容解説

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落語、鰻のたいこのあらすじと内容解説


鰻のたいこのあらすじ

真夏の真っ盛り、誰かに昼飯をたかろうと表へ出た野だいこの一八(いっぱち)、さっそくどこか見覚えのある男に接近する。
「こりゃどうも、へぇどうも」
「どうしたい、師匠?」
「大将、私はね、空腹の気味なんで、へぇ」
「じゃ、ただ帰すのもなんだ。どこかで飯を食って別れよう」

やってきたのは汚い鰻屋。
「これで食べ物は本場だよ」
「私はね、家を食べるんじゃないんで、鰻を食べるんで」
「一度遊びにおいで。役者衆からもらった反物が溜まっちゃってんだ。二三反持ってくかぃ?」
「へぇお宅はどちらでしたっけな?」
「どちらって、お前、先のとこじゃないか」
「先のとこ、えぇ、心得てます。伺います」

ちょいと話は噛み合わないが、こんな上客、逃がしちゃいけないと十八は大車輪。
酒をほめ、親香をほめ、鰻をほめ、よいしょの限りを尽くす。

さて、その上客がはばかりに行ったきり、帰ってこない。
迎えに行ったが、トイレは空だ。
「どうしたぃ、ここへ入ったお客は?」

さては気を利かせて、先に勘定を済ませて帰ったのかと思ったが、請求書を突きつけられて目を白黒。
「そりゃまぁ、私は羽織を着てるけど、どっちが客だか取り巻きだか、分からないのかぃ!」

たちまち態度一変、家に、酒に、親香に、鰻に、ことごとくケチをつけ始める。
「このセコなる鰻屋で二人前、この勘定は高いよ、君」
「でもお供さんが三人前、おみやげにお持ちで」

あぁやられた。
敵ながら天晴れなやつと諦めた十八、襟に縫いこんだなけなしの札を引っ張り出し、泣く泣く勘定を済ませたが、今度は買ったばかりの下駄がない。
「こんな小汚いのじゃなく、私の下駄を出しとくれ」
「あぁ、あれなら、お供さんが履いて参りました」


鰻のたいこの内容解説

ヌルリと巧みに逃げた客
あぁ、あっちが鰻だった

野幇間(のだいこ)一八が、獲物の客を探して歩いているうちに、見たことがあるような男に出会い、つい知ったかぶりで御馳走にあずかろうとして、鰻屋で大失敗してしまう、というのが噺の中心。

鰻の幇間(うなぎのたいこ)は、古典落語の演目の一つ。
作者不詳の、いわゆる「間抜け落ち」の落とし話。
主に東京で広く演じられる。
明治中期の実話がもとといわれるが、詳細は不明。

幇間(たいこ)とは、酒席や遊興の場で顧客に同席し、話芸や即席芸でお座敷を盛り上げ、客を楽しませ、ご祝儀やギャラをもらって生活する職業。
幇間は置き屋に所属する者と、自分の人脈で顧客を掴まなくてはならない全くの私営業者があり、後者を俗に「野だいこ」と称した。

野だいこの呼称を世に広めたのは夏目漱石の「坊ちゃん」だろう。
おべっか使いの美術教師に坊ちゃんが進呈したニックネームで、池部良主演の映画では森繁久彌の赤シャツ教頭にべったりの多々良純が秀逸だった。

たいこと言えば八代目桂文楽が相場。
たいこだか、文楽当人がか分からなくなってしまう。
うなぎのたいこは、笑いながらも一杯食った十八に同情を禁じえない。
その狡猾にして間抜けなところが余すところなく表現されている。

また二階に上がると子供が手習いの机を抱えて下りていくところなど、せこい鰻屋の描写が素晴らしい。

これが五代目古今亭志ん生だと、もう少しふてぶてしい野だいこになって、それはまたそれ、で味わい深いものである。


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